丈夫で優美な漆器・輪島塗
能登地方は能登半島を含む石川県の北部にあたります。能登の伝統工芸としてもっともよく知られているのは輪島塗でしょう。つややかな塗りに優美な模様が描かれた格調高い漆器です。
輪島塗の起源ははっきりしていませんが、15世紀には輪島に塗師がいたことがわかっているそうです。漆や、材料のケヤキ、アテ(ヒノキアスナロ:石川県の木です。)などに恵まれ、湿気のある気候が漆塗りに適していたので、製造が盛んになっていき、江戸時代後期には海路や陸路により日本全国に広まりました。
輪島塗は美しいだけでなく、とても丈夫です。漆に輪島特産の珪藻土(けいそうど)の一種、地の子(じのこ)を混ぜることによって、漆が木につきやすくなるのです。珪藻土というのは珪藻という藻の殻の化石から生まれた土で、最近では塗り壁などに使われていますよね。そして、さらに複雑な塗りの工程を数多く重ねることにより、丈夫な器ができあがるのです。
模様は、蒔絵(まきえ)や沈金(ちんきん)により施されています。蒔絵は、漆で絵を描き、それがまだ乾かないうちに金銀や螺鈿(らでん)をつけて定着させる技法です。沈金は漆を塗った表面を削って、そこに金粉などを入れて模様を浮かび上がらせます。塗りの厚い輪島塗だからこそ発達した技法なのです。
輪島では、輪島工房長屋で蒔絵や沈金の体験をすることができますよ。作品づくりを通して、輪島塗の魅力に触れてみてください。